-凌ぐとは、足りることを知ること-

「凌」という山歩き

「凌」という山歩き

 現代の、防水透湿素材を始めとする機能素材の進歩はとてもめざましく、その恩恵で多くの人は快適に山歩きを楽しむことができるようになりました。例えばレインウェアは、その完璧なプロテクションによって、身体を雨から守ってくれると同時に、衣服内の湿気を外へ排出する透湿性も兼ね備えています。ただし(もちろん個人差もありますが)内側からの汗による濡れは、状況によってはこの機能素材の透湿性能を上回ってしまう場合があるのです。この汗を乾かしてくれるものは「風」以外にありません。高温多湿で峻険な地形の多い日本の山登りにおいて、アクシーズクインでは特にこの汗の排出の問題に対して、本当にたくさんの試行錯誤を重ねてきたのです。

 

 雨から濡れないように身を守り、体温を奪われないように風を防ぎながら、同時に汗を乾かしてくれる風は通したい。この矛盾した開発目標を叶えるために、雨具に対して少し割り切った取り組みをすることにしました。つまり、「多少濡れるが、」という前提を持つことです。そうすることで雨具の固定概念を離れ、ある程度の雨を防ぎながらも衣服の中を風が抜けていくような、柔軟な発想の構造を形にすることができるようになりました。

 

 雨風を遮断するのではなく、凌ぐ、ということ。この凌ぐという言葉は、雨風だけでなく、ひいてはものの考え方にも通用するものです。凌ぐことを知ることは、それで足りることを知ることでもあります。その山登りに本当に必要な装備をよく考え、経験を積んで安全で快適な山登りのために知恵を振り絞る。それで足りることを知れば、より装備を軽量で簡素にでき、その山の奥深さに向き合う時間が増えるのです。

 

 足りることを知るということはつまり、寛容になることかもしれません。それは、山の標高や難度を気にしすぎたり、ピークハント、コースタイムなどの、今までのこだわりから離れる一助にもなります。そうして、こだわりを離れることで見えてくる新しい楽しさがたくさんあります。

 

 アルコールバーナーで静かに料理を楽しんで、お腹一杯になったらハンモックで昼寝をする。先を急がないからできること。テントを使わずに、晴れていたらタープもいらない。自分が住んでいる街の夜景を見ながらマットの上、寝袋にくるまるだけの小さな冒険も。

 

 アクシーズクインの製品には、こうした凌(シノギ)への思いが込められているのです。